クリニック開業を目指す先生方にとって建築工事は、一生に一度といってもいい大事な投資です。そこで慎重になるあまり、なかなか第一歩が踏み出せなかったり、やり方が分からず悩んだりする先生も多いのではないでしょうか。

この記事では、クリニック開業における内装工事の重要性を確認したうえで、信頼できる業者の選び方から、失敗しないクリニック設計の秘訣までを解説していきます。

クリニック開業における内装工事の重要性

クリニック開業にあたり、最初に手をつけるべきことは、内装設計です。

開業するには保健所に開業届を出しますが、それには図面の提出が必要になります。設計に合わせてシステムや機材、什器類などを選んでいく必要があり、これにはかなりの時間を要します。

つまり内装工事の設計はなにより先に済ませておく必要があるのです。

また一度作ってしまうと20年、30年とその内装で診療を続けていかなくてはなりません。投資額も大きく、簡単に作り直すことはできないだけに失敗ができません。工事後の修正や関係の継続を考慮した業者選びも重要になってきます。

患者様も、美しく快適で安心できるクリニックに通いたいと思うように、
内装設計は、これから開業するクリニックの機能が発揮できるかどうかのカギを握っています。

そのようなことをすべて考えていくと、理想とするクリニックの開業には、信頼できる業者を選ぶことが必須と言えます。

では、信頼できる業者とはどのような業者なのでしょうか。

信頼できる内装工事業者の選び方

クリニック開業にあたって内装工事業者を選ぶポイントは次の4つがあります。

ポイント1:クリニック専門、施工実績が豊富
ポイント2:「立ち位置」が明確
ポイント3:他の専門業者との連携能力がある
ポイント4:開業コンサルタントやその業者を利用した医師の推薦がある


これらのポイントについて順にみていきましょう。

クリニック専門、施工実績が豊富

まず、クリニックの開業や経営・運営についてよく知っていることと、施工実績が豊富であることがポイントです。これを確認するには、施工事例を見ることが一番です。1~2例だけではなく本当に経験豊富かどうか、できるだけ多くの事例を見てみましょう。

医療施設は特殊な建築規制と機能要件を満たす必要がありますのでその知識も必要になります。

経験豊富な内装工事業者は、理想とするクリニック開業のために、適切なアドバイスや考えていることを最適な形で実現してくれる実力があると考えられます。

「立ち位置」が明確

「立ち位置」が明確である業者とは、自らのサービスレベルや専門分野を明確にしている業者を指します。高品質で高価格のカスタムデザインを得意とする業者、コストパフォーマンスを重視した標準的な内装を提供する業者、コスト最優先で設計施工を行う業者といろいろな業者があるものです。

内容と価格をはっきり打ち出せるということは、自信と専門性の裏付けとなります。どのような品質の仕事をするのか、立ち位置を明確に打ち出していれば、自院の予算と希望を考慮して選択することができます。

他の専門業者との連携能力がある

内装工事では、電気や水道、医療機器の設置など、いろいろな専門分野の知識を必要とします。そのため、異なる分野の専門家や業者とスムーズに協力できるかが重要になります。信頼できる内装工事業者は、内装に関係するすべての専門工事を調整して、一貫した品質とスケジュール管理ができ、完成品質を保証できます。

内装工事でも施工中に発生する様々な課題があるものですが、これらの課題を他の専門業者との連携を行ってスムーズに解決し、開業医のビジョンを実現するための強力なパートナーとなり得るかどうかがポイントとなります。

開業コンサルタントやその業者を利用した医師の推薦がある

開業に際して信頼できる、医療コンサルタントや、開業した実績のある他の医師に候補となる業者を勧めてもらい、参考にするのがよい方法です。

評判や業者の話ではなく、経験のある第三者の意見は信頼できる情報源です。成功した事例だけではなく、失敗例も聞きながら慎重に業者選びをするとよいでしょう。

設計図面の重要性と打ち合わせの進め方

クリニック開業が成功するかどうかは、内装工事の図面の作成が重要なカギを握っています。

良く練られた設計図面には、機能的かつ効率的な医療を実現するための詳細な情報が含まれており、医療機器の配置、スタッフと患者の動線、プライバシー保護措置、そして待合室の快適さといった要素が考慮されているものです。

優れた設計図面を作成するには、打ち合わせが重要であることは言うまでもありません。医師、内装工事業者、そして場合によっては開業コンサルタントが密接に連携し、共通の目標に向かって意見を交換します。

初期の段階では、関係者間で予算の設定、スケジュールの策定、デザイン要望の共有を行いましょう。定期的に打ち合わせを行って開業計画の進捗状況をチェックしていくことも重要です。

このように、一枚の図面を前にして関係するすべての人が密接に連携して進めていきます。この過程をうまく進められるかどうかが、思い描く理想のクリニックを作るのに必要なファクターだといえるでしょう。

費用と品質のバランス

運営効率の高いクリニックを実現するためには費用と品質のバランスを見極める必要があります。

理想のクリニックを追求するあまりコストをかけすぎてもいけないし、安さを追求して、質が落ちても良くありません。

費用と品質のちょうどよいバランスを実現するためには、
希望の要件と優先順位を明確にしておきましょう。

何ができるようにしておくべきかを整理してそれを優先順に並べれば、適切な予算配分ができるようになります。

また、見積もりは必ず複数の業者からとるのが鉄則ですが、その際も先に整理した要件の優先順位が生きてきます。整理した要件を使って同条件で見積もってもらい、それぞれの提案を比較検討しましょう。

開業コンサルタントとの連携

内装工事業者の選定にあたっては、コンサルタントの意見も参考になります。いつも懇意にしている医療コンサルタントがあればそこに相談してもよいですし、クリニック開業を得意とするコンサルタントに相談するのもよいでしょう。

コンサルタントは、他のクリニックの事情、開業事例から国の政策による診療報酬の改定がどうなるのかまで知っています。また医療業界で活躍する各種業者の評判も聞いているはずです。

開業に必要な多岐にわたる領域で専門的な知見を提供してもらいながら考えれば、日々の忙しい仕事の中で適切に意思決定をしていけます。コンサルタントの費用が掛かりますが結局は時間とコストの節約になるのです。

失敗しないためのポイント

内装工事を失敗しないためのポイントは、次の3つになります。

①見積もりの安さに飛びつかないようにする
②必ず経験豊富な業者に頼むこと
③引き渡し後でも柔軟な対応をしてくれる業者に頼むこと

順にみていきましょう。

見積もりの安さに飛びつかないようにする

見積りの正確さは、内装工事業者によって様々です。見積りが甘く、後で追加費用が発生することもありますので、見積提示額だけで判断をしてしまうことは危険です。

コンサルタントなどと相談しながら、提示した要件を満たした内装をすべてこの金額でやってもらえるのか、繰り返し確認しましょう。

必ず経験豊富な業者に頼むこと

業者側の経験が浅いと、やってはいけないこと、しなければいけないこと、いわゆる鉄則の盛り込みが十分でない場合が出てきます。

その点、プロのクリニックの内装工事業者はしっかりと鉄則を守ってくれます。

1~2例しか実績がないところではなく、クリニックについて経験豊富な内装工事業者を選ぶようにしましょう。

引き渡し後でも柔軟な対応をしてくれる業者に頼むこと

内装工事が終われば、什器や医療機器、電子カルテ等、コンピュータ類やネットワーク機器の搬入がはじまります。この時点になって初めて判明することが必ずあります。それはコンセントの位置をかえたほうがいいとか、什器の搬入を終えたら、案内表示が分かりにくくなったなどの事象です。

こうした場合に、速やかにアフターフォロー対応をしてくれるかどうかも重要になってきます。こちらとしては工事が終わって引き渡しをすれば関係も終わりというわけにはいきません。工事が終わってもきちんと関係をつないでくれる業者を選びましょう。

まとめクリニック開業を成功に導くには

以上のように、クリニック開業の成功には内装工事の成功が非常に重要です。先生の想いを十分に盛り込んだ計画、信頼できる業者の選定、そして詳細な設計図面の準備にかかっています。

理想の実現に必要な要件を整理し、費用と品質のバランスを見極めれば、失敗のリスクを避けられます。信頼性の高い業者選びには、クリニックの施工実績、横の連携ができているか、他の先生やコンサルタントからの推薦を参考にするのが良いでしょう。

筆者紹介
鬼尾 宗慶
医療法人勤務 ライティング・記事作成 / ライター
ビジネス全般・医療関連記事執筆を得意とする