「珈琲は、ただ飲むだけではなく ”淹れる ”という事を楽しんでいただける飲み物です。そこを楽しんでもらえると嬉しいですね。」

そうお話いただいたのは、東京都八王子にある「かしわや珈琲」店主の長澤さん。

毎日、お客様おひとりお一人にあった珈琲を提供し続けている長澤さんに今回、お話をお伺いしました。

実は、長澤さんは店主になる前は、大手印刷会社や砂糖問屋でサラリーマンとして働いていた経歴の持ち主。

店主になる前の意外な経歴や珈琲に対する考え方などもお聞きしました。

わたしが珈琲店主になるまで

──「かしわや珈琲」のお店は、いつ頃から始められたのでしょうか?

長澤さん:2016年にオープンしました。西八王子駅から徒歩3分ほどのところにある、6坪くらいの小さな店舗です。

──そうなんですね!お店をオープンする前は、どんなお仕事をされていたのですか?

長澤さん:珈琲店で働いていたわけではなくて、大学卒業後は、大手印刷会社に。そのあと、砂糖問屋に勤めていました。

そこでの仕事も面白くて…。砂糖って白が多いですが「黒砂糖」ってご存じですか?

──茶色ではなく、黒ですか?

長澤さん:黒砂糖は「精製されていない砂糖」のことを言うんですよ。沖縄の黒糖も黒砂糖の一種で、作り方が規定されているんです。

その黒砂糖のバリエーションをつくり、販売して、新しいブランドを作ったりしていました。

「MARUKICHI SUGAR」というブランドを立ち上げました。

いわゆる白い角砂糖ってあるじゃないですか。その黒色バージョンを作ってみようよ、という話になって。

──黒色の角砂糖ということですか?

長澤さん:そうそう、でも「角じゃなくていろいろな形にしてみよう」って(笑)会社やお店のブランドロゴを作ったりしました。そのほか、デパートに採用いただいたりもしましたね。

──砂糖をいろいろな形にするのはすごいですね!

長澤さん:小さな会社だったので、企画から仕入れ、営業販売まですべて行っていました。

ただ、元々珈琲を仕事にしたかったんですよね。砂糖問屋の前には大手印刷会社で15年ほど働いていて、食品のパッケージやセールスプロモーションを担当していました。

そこを辞めてからいきなり珈琲屋さんをやってもよかったのですけれど、幅広い知識をつけようと思い、ホテルや雑貨屋さんなどをお客様にするような砂糖問屋で働くことにしました。結果、業界の話なども聞けて良かったですね。

砂糖問屋で働いている間にコーヒーマイスターの資格を取得して、今の「かしわや珈琲」を始めました。

──なるほど、印刷会社と砂糖問屋での経験が、現在に生きているんですね。

お話を聞いていると、印刷会社を経験されていたからこそ、今販売している珈琲のパッケージにも生かされているのかなと思いました。

長澤さん:本当にそうですね。製菓会社など大きな相手先を担当させて頂いていたので、パッケージに書かないといけない内容とか、文字数とかいろいろ細かいことがあるんですよね(笑)

印刷会社で商品の外側のパッケージをやって、砂糖問屋でパッケージの中身にあたることを経験して、珈琲で中身も外側も!といった感じですね。

珈琲に対する考え方

──珈琲の勉強や知識は、どのようにしていたんですか?

長澤さん:独学で勉強しました。

──独学でここまでプロになれるなんてすごいですね!

長澤さん:いえいえ、珈琲屋さんって、意外と独学の方が多いと思いますよ。

私だって焙煎のプロといわれますが、毎日毎日試行錯誤してスキルを磨いています。まだまだ発展途上です。

珈琲のよし悪しってシンプルに「飲んでおいしいか、おいしくないか」それだけだと思います。

お店で大切にしていること

──お店をオープンするときには、何かこだわったポイントはありますか?

長澤さん:最初は分からないことだらけでした(笑)でも、「きちんとした素材を使う」ことは意識しています。

たとえば内装に関しては「天井に和紙を貼って、壁には珪藻土を自分で塗って、ショーケースは無垢の木を探して…」など、「本物の素材」を使っています。やはりペラペラの素材を使っていると、商品まで安っぽく見えてしまいますから。

とにかく、自分がいいと思うもの・自信を持っておすすめできるものを使うようにしています。

──細部へのこだわりが感じられて素敵です。実際にお店を持つと、大変なことも良いこともありますよね。

長澤さん:そうですね…どちらにしても「全部自分でやる」ということでしょうか。店舗の運営を自分でやるのは大変な面もありますが、「一人で気楽にできる」という良い面もあります。

──珈琲店で働いていて、よく聞かれることなどありますか?

長澤さん:よくお客様から聞かれるのは、「どうやったらハンドドリップで美味しい珈琲が淹れられるの?」といったことですね。

ハンドドリップのいいところって、「美味しい珈琲を見つけることができる」ところかなと思います。なので「探すことを楽しむ」のが一番かと思います。

珈琲の「美味しさの基準」って本当に様々なんですよね。人によっても違うし、シーンによっても気分によっても違います。その違いを楽しんでもらえるといいな、と思います。

──なるほどですね、珈琲に対する楽しみが増えた気がします。長澤さんは、ご自宅でもコーヒーは飲まれるんですか?

長澤さん:ほとんど飲まないですね(笑)仕事モードになってしまうので、純粋に楽しめなくなってしまいます。

でも、自分で淹れるのではなく、誰かに淹れてもらう珈琲は美味しいんですよね。

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■プロフィール■
かしわや珈琲 店主 長澤 智之さん
大学卒業後、印刷会社入社。菓子パーケージ等を担当し、セールスプロモーションにも携わる。その後、砂糖問屋にて新ブランドの立ち上げを通して幅広い案件・業務に携わる。サラリーマン時代の経験を活かし、かしわや珈琲にて店主・コーヒーマイスターとして働く。

■ショップ情報■
かしわや珈琲 〒193-0835 東京都八王子市千人町3-3-3 https://www.kashiwaya-coffee.com/